マイクロバイオームに関する本である。sunajii師匠の課題図書ということもあって随分前に読んだのだが、記述が延び延びになっておりました。

あなたの体は9割が細菌: 微生物の生態系が崩れはじめた

う~んサクサク読めるタイプの本ではないのですが、エッそうなの!?という内容。かなり具体的に記述されていて素人にも読みやすい仕上がりになってるサイエンス本です。

昨年の8月刊行、話題になったベストセラー。ここ数年、よく「腸内細菌が健康の秘訣」とかよくあちこちで耳にしますが、イヤイヤ、人間の機能そのものを支えて居るのは実は体内・体表にいるすべての細菌の集合体(マイクロバイオータ)であるんだよという話(無理やりまとめると)。

タイトルが内容をそのまま表現してますが、原題は10%human。実に、我々の体の9割が共生する細菌の細胞であるらしい。例えば大便の8~9割は細菌ということだ・・知らんかった。

著者はサイエンスライターである。ずっと科学畑の人ですね。ハードなフィールドワーク研究中に感染症にかかり、抗生物質投与の現代的な科学治療を受け後遺症に苦しむ中、ヒトマイクロバイオーム・プロジェクトのサンプル提供者としてその研究結果を見つめ続けてきた。

かつてヒトゲノムプロジェクトというのがありましたね。かつてはDNAの中身が分かれば、生命のすべてが分かると皆思っていた。2003年にプロジェクトは終了。が、相変わらず治療法の分からない難病は存在する。

どうも、遺伝子の設計図であるDNAが、人の体のはたらきの全てを支配している訳ではなさそうだ。

ということで、その後、人の体上(内外)に存在して共存関係にある細菌に注目が集まる事に。同じ技術を使って解析して何物かをつかもう・・としたのが、ヒトマイクロバイオーム・プロジェクトらしい。

ここから分かってきた事が、えらいこっちゃ。という内容で、ここに書いてあることは、ここ10年ほどで分かってきたある意味科学界の最新情報であると思う。抗生物質によって命を救われた著者であるが、今医療現場で大量に処方される抗生物質の安易な使用に警笛を鳴らす内容になってます。

いろいろ実例が記述されているのだが・・「肥満」についての話はかなり面白かった。いろいろやってもダイエット出来ないあなた、それ、保有する細菌群が問題なのかもよ。本の中では詳細なマウス実験の話が出てくる。本の後半でかなりページを割いて記述されて居るのが、母親から赤ちゃんへのマイクロバイオームの受け渡し。赤ちゃんは生まれてくるまで無菌状態であるが、経口出産の過程で細菌たちも受け渡ししている。消毒しすぎて、必要な細菌たちの受け渡しが阻害されてしまっている・・ということが分かってきた今現在、いろいろ改革する必要はありそうですね。

人が保有する細菌たちは、やっぱりバリエーションに富んでいる方がバランスが良いらしい。化学的なもの(添加物とか保存料とか殺虫剤とか)の使用によって、一度壊滅状態に追いやられた細菌たちを取り戻すのは容易ではないらしい。普段出来るだけ排除している身としては、理論的な裏づけを貰ったような感じがしました。

今現在、世界中人体実験中とも言える感じですが、自分は何を選択するかに尽きると思わされたような。

凄くためになる本です。オススメ!