昨日は身体教育研究所の公開講座だったので、行って来ました。ダン先生の話は毎回もの凄く面白いのですが、なかなか文章化が難しい内容。カテゴライズを拒否する世界だし、ブログにはあんまし書いていないけど毎月一回あるので実は最近欠かさず参加。聴衆も関西一円から集合(前実習でお相手して頂いた方は宮城から!で流石に驚いた)、指導者の方も来られていて結構年齢層は高めです。
さて昨日の話の一部はそのまま書いても受け取りやすい内容だったので、チョッと紹介してみたい。
晴哉先生の運転手は、刀鍛冶の家の人だったらしい。
この方からダン先生が聞いた修行の話。
昔の職人の家は自分の家で修行すると甘くなるということで、その人も知り合いの刀鍛冶の家に十歳で奉公に出された。
弟子が最初にやるのは、親方が鉄に鎚を振り下ろしてカンカン鍛える作業の相手。加熱した鉄を間髪入れずに水に入れ「ジュッ」とやるのをやらされる。カンカンジュッ、カンカンジュッ、っていうやつである。
これが、難しい。勿論、手取り足取り教えてくれるわけではない。
「ジュッ」のタイミングが悪ければ、鉄の上ではなく弟子の頭の上に鎚が振り下ろされることに・・実際、最初の一年で3回頭蓋骨骨折で入院したらしい。恐ろしいが、こうなるともう、弟子のほうも必死である。
マジで命かかってんだから。この「今」というタイミングがどうでないと駄目かを、文字通り体で覚える訳だ。
昔の職人は、こうやって仕事を覚えたもんです。という話から一転、とある製鉄所の話に。
●●製鉄所(多分調べれば分かる大会社なので敢えて伏字にしておこう)が、「名刀・正宗」を現代科学の技術を集結して再現するプロジェクトを行うことにした。凄い技術で分子構造まで解析し、全く同じ物が出来上がった!・・・ということで、お披露目の会をすることになった。
刀って、勿論武器なんで、そう簡単に折れちゃ困りますよね。人を斬る前提で作られているので、出来上がったら刀試験をする。江戸幕府の行っていたスタンダードな刀のテストの仕方というのがあるらしく、お披露目の会でそれを行うことに。
何でも、樽ぎりぎりにぷわんと表面張力で水が盛り上がった状態にして、其処に刀を打ち付ける。のだそうだ。
で、やったんですよ、刀試験。
・・・で、折れちゃった。再現正宗。
会場に参加した人は一様に、どういう顔していいか凄く困ったという・・
刀って、適当に鉄打って出来ているわけじゃない。脈々と職人の世界で培われてきた「これ」という技を駆使して作られてる。データでこうだからこう、という科学的な世界がインチキ、というのを図らずも証明してしまった話ではある。
別に刀鍛冶だけの話じゃない。
日本の産業を支えてきたのは、こういった職人技の世界。まさに日本人のアイデンティテイとも言うべきものである。
残念ながらこういったものは、否定されて、日本国内で全く評価されていない。データで評価して数値化する世界が一般化した今、多分そのうち無くなってしまうだろう。
文化大革命でこの技の世界を完全に失った中国は、その財力をもって日本の職人を欲しがっているそうな。
彼らにはその価値が良く分かっている。実際、職人として今凄い技あっても日本国内じゃ食べていけないものな~~ ギャラ三倍提示されたら、海外行っちゃうかも。
冗談でなく近々文化の核の部分をさらわれちゃって、日本には何も残らない・・ってなっちゃうかもネ。
という話が、印象的であったのでした。
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